もっともに聞こえるが、この言葉には誤解が含まれている。
出口を決めることと、売ることは別である。
出口とは、売却の予約ではなく、建て方の設計図なのだ。
区別するのは、再現性・レバレッジ・委譲という三つの壁の通過状態である。
月収100万のフリーランスと、月利益100万の仕組み化された会社は、同じ数字でも別の資産クラスに属する。
「この事業が完成したら、どんな状態か」を第三者にも通じる金額の言葉で置く行為である。
属人の売上より仕組みの売上を選ぶようになり、自分の代替可能性を高める投資が「損」ではなく資産形成として正しく評価されるようになる。
出口は未来の話に見えて、今日の意思決定の基準である。
売る、承継する、保有して配当を受け続ける。
すべて出口の一形態であり、譲渡可能な水準まで建てた会社だけが、この選択肢を全部持てる。
属人のまま建てた会社は、どれだけ稼いでいても、選択肢を持てない。
売却の場でも、取引先との交渉でも、辞められる側が主導権を握る。
出口から逆算する思想の本質は野心ではなく、選択肢の確保である。
調査会社の継続的な調査では、国内企業の後継者不在率は長年6割前後で推移してきた。
この中には、地域で確かに稼いできた優良企業が大量に含まれる。
稼げているのに、社長の属人性が高すぎて誰にも引き継げず、廃業を選ぶ。
一方、業務が文書化され判断が仕組みに移っている会社は、親族にも社員にも第三者にも渡せる。
同じ「稼ぐ会社」でも、建て方の違いが、最後に持てる選択肢の数を決めている。
保有し続けることも立派な出口だ。
決めるべきは手放すかどうかではなく、「手放せる水準まで建てるかどうか」であり、後者は保有し続ける人にとっても、病気や環境変化への保険になる。
譲渡可能な水準まで建てた者だけが、売る・継ぐ・持ち続けるの全選択肢を手にする。
