二重化された装置、設計された切替。
それでも市場は丸一日止まった。
装置は二重化され、自動で予備機へ切り替わる設計だったが、切替設定の不備で作動せず、日本の株式市場は史上初の終日全銘柄売買停止に至った。
冗長構成は存在したが、作動しなかった。
「バックアップへの切替を、最後に実際に試したのはいつか」である。
予備系は、切替が実際に発動して初めて存在する。
転職市場での価値は応募して初めて観測され、頼れると思っている支援は、小さな依頼を一度通して初めて経路になる。
検証済みは実線、未検証は点線。
点線を実線として数えた瞬間、備えの会計は粉飾になる。
実線に描き替える権利は、希望ではなく現実の検証だけが持つ。
これが「落ちても墜ちない」経営である。
客室乗務員は90秒での緊急脱出を実機モックアップで反復訓練する。
手順書を読んだことと体が動くことの間には、訓練でしか埋まらない距離があると知っているからである。
事業の予備系も同じで、「いざとなれば受託に戻れる」と思っている人が実際に一件受注してみると、営業経路の錆と相場観のずれに気づく。
その気づきを危機の前に得るのが検証であり、危機の最中に得るのが遭難である。
検証の要点は規模ではなく実働の有無であり、最小の一回でよい。
一件の受注、一通の応募、一つの小さな依頼で足りる。
実線と点線を描き分けた系統図だけが、設計図の名に値する。
