LF. 理論カリキュラム100 / 第5部 落ちても墜ちない
058
期待値計算の適用外領域
命題
退場を含む賭けでは、期待値は生存者にしか意味を持たない。
素材 タレブ『身銭を切れ』、エア・カナダ143便(ギムリー・グライダー)。
論理展開1 / 5
思考実験: 6発中5発が空砲の拳銃によるロシアンルーレットに1回1億円の賞金。

1回の期待値は約+8,333万円で、計算上は「打つべき賭け」に見える。

論理展開2 / 5
しかし繰り返せば、死は確率1で訪れる。

集団の平均と、一人が繰り返した場合の時間平均は一致しない(エルゴード性の問題)。

論理展開3 / 5
よって損害が有界で回復可能な領域では、備えは費用対効果で決めてよい。

過剰な備えは正当に削ってよい。

論理展開4 / 5
しかし「墜ちる」領域 — 破産・回復不能な健康毀損・家族基盤の崩壊 — に触れるリスクは期待値計算の適用外であり、生存条件として備える。
論理展開5 / 5
「滅多に起きないから」は削減の理由にならない。

ラムエアタービン(全動力喪失時の最後の風車)は、ほぼ全機で一度も使われないまま、全機に搭載され続けている。

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第5部 落ちても墜ちない
058 期待値計算の適用外領域
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