LF. 理論カリキュラム100 / 第5部 落ちても墜ちない
054
独立性こそ冗長性の通貨
4系統の油圧を持つ機体が、たった一つの破壊で全系統を同時に失った事故がある。

多重化は嘘をつかないが、多重化の数え方は嘘をつく。

命題
同じ前提の上に系統を何本並べても、前提ごと倒れる。
前提講 053
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1985年8月12日の日本航空123便。

747の油圧は4系統あったが、全配管が垂直尾翼付近の同一区画を通っており、圧力隔壁の破壊という一つの事象が共通通過点を直撃して全系統が失われた。

4本が同じ導管を通るなら、実質1本である。

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2011年の福島第一原発。

非常用発電機は複数台あったが、多くが低所に置かれ、「津波はこの高さまで来ない」という同一前提の上にあった。

前提が一つである限り、その上に何台並べても、冗長性は前提の正しさを超えられない。

3 / 5
2018年の北海道ブラックアウト。

道内需要の約半分を一つの発電所が担う集中構造の中でその発電所が停止し、連鎖の末にほぼ全域約295万戸が停電した。

冗長性の会計は系統の数ではなく、最大の一つが落ちた後の残存能力で行う。

4 / 5
事業の共通前提は典型的に5つ。

自分の稼働・居住地域・業界やプラットフォーム・単一の景気変数・中核的な人間関係。

収入源が3本でも、全てが自分の稼働時間に依存するなら、それは自分という単一部品の直列である。

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だから収入源ごとに5前提への依存表を作り、複数の系統に共通して現れる前提に印を付ける。

印の付いた前提こそ、図に描かれていない真の単一障害点である。

事例
123便の4年後、1989年のユナイテッド航空232便では、尾部エンジンのファンディスク破断が3系統すべての油圧配管を切断した。

やはり配管が尾部の共通区画で交差していたのである。

乗員たちは左右エンジンの推力差だけで機体を空港まで運び、296名中185名が生還した。

二つの事故を受けて業界は、配管破断時に作動油の全流出を防ぐ遮断機構を組み込み、系統経路の分離を見直した。

520名と111名の犠牲から抽出された教訓が、「冗長性の価値は本数ではなく独立性で決まる」の一行である。

事例続

私たちはこれを血を流さずに輸入できる。

よくある誤解
「分散すれば安全」は誤読である。

3つのSNSアカウントは3系統に見えるが、「自分が毎日投稿する」という前提を共有していれば、自分の稼働が単一障害点のままである。

まとめ
冗長性の通貨は独立性である。

本数を数える前に、依存先の設計図が何種類あるかを数える。

宿題
全収入源について5つの共通前提への依存表を作り、印が最も横に並んだ行を特定する。
次講
事故はどういう形で起きるか
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054 独立性こそ冗長性の通貨
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