しかしこの掛け算は、単一依存の事業がいかに危険かを、感情を挟む余地なく示してしまう。
優秀さでは逃げられない算術である。
鎖はどの一輪が切れても千切れる。
全体の信頼度は各要素の信頼度の積になる。
信頼度0.99の優秀な部品でも10個直列で約0.90。
0.9の部品なら10個で約0.35 — 3回に2回失敗するシステムになる。
優秀な部品を集めても、つなげた瞬間に全体はどの単体よりも弱くなる。
依存と条件を増やすことは、それ自体がリスクである。
各条件が年95%でも、全体は0.95の4乗で約0.81まで落ちる。
だから問いは「落ちない確率を上げる」から「落ちても墜ちない構造を組む」へ移らざるを得ない。
ハードディスク製造の集積地だった工業団地が浸水し、世界のHDD供給が急減、遠く離れた各国のPCメーカーまで減産と価格高騰に巻き込まれた。
各社の生産体制は個々には優秀だったが、「タイの工場が動いている」という一つの条件に世界中が直列でぶら下がっていた。
個々の優秀さは、直列構造の脆さを救わない。
一人の事業でも、単一顧客・単一販路・単一の自分にぶら下がった売上は同じ構造の中にある。
要点は、増やすなら直列ではなく並列に増やせ、である。
工程の追加は直列でリスク増、販路の追加は並列でリスク減。
つなぎ方で符号が逆になる。
落ちない設計は不可能であり、問いは墜ちない構造へ移る。
その数があなたの直列の長さである。
