LF. 理論カリキュラム100 / 第5部 落ちても墜ちない
052
直列の掛け算
ここからの三講は掛け算だけを使う。

しかしこの掛け算は、単一依存の事業がいかに危険かを、感情を挟む余地なく示してしまう。

優秀さでは逃げられない算術である。

命題
依存と条件を増やすこと自体が、信頼度を指数的に削る。
前提講 044
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直列システムとは、どれか一つ壊れれば全体が止まる構造である。

鎖はどの一輪が切れても千切れる。

全体の信頼度は各要素の信頼度の積になる。

2 / 5
この掛け算は恐ろしい速さで崩壊する。

信頼度0.99の優秀な部品でも10個直列で約0.90。

0.9の部品なら10個で約0.35 — 3回に2回失敗するシステムになる。

3 / 5
しかも直列の全体信頼度は、最弱の部品にすら達しない。

優秀な部品を集めても、つなげた瞬間に全体はどの単体よりも弱くなる。

依存と条件を増やすことは、それ自体がリスクである。

4 / 5
「主要顧客が継続し、かつプラットフォームが存続し、かつ自分が健康で、かつ市場が変わらない」ことで成立する売上は、四条件の直列である。

各条件が年95%でも、全体は0.95の4乗で約0.81まで落ちる。

5 / 5
長期にわたり一度も落ちない前提の設計は、算術的に破綻している。

だから問いは「落ちない確率を上げる」から「落ちても墜ちない構造を組む」へ移らざるを得ない。

事例
2011年のタイ大洪水は、直列依存の脆さを世界規模で実演した。

ハードディスク製造の集積地だった工業団地が浸水し、世界のHDD供給が急減、遠く離れた各国のPCメーカーまで減産と価格高騰に巻き込まれた。

各社の生産体制は個々には優秀だったが、「タイの工場が動いている」という一つの条件に世界中が直列でぶら下がっていた。

個々の優秀さは、直列構造の脆さを救わない。

一人の事業でも、単一顧客・単一販路・単一の自分にぶら下がった売上は同じ構造の中にある。

よくある誤解
「条件を増やすな」を「事業を単純にしろ」とだけ読むのは不十分である。

要点は、増やすなら直列ではなく並列に増やせ、である。

工程の追加は直列でリスク増、販路の追加は並列でリスク減。

つなぎ方で符号が逆になる。

まとめ
直列の信頼度は掛け算で崩壊し、全体は最弱部品より弱い。

落ちない設計は不可能であり、問いは墜ちない構造へ移る。

宿題
自分の売上が成立するために同時に真でなければならない条件を全部書き出す。

その数があなたの直列の長さである。

次講
その答えが並列
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052 直列の掛け算
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