この「計画的に壊れる部品」という発想の有無が、危機のとき事業と家庭の運命を分ける。
過大な電流が流れたとき、回路の中で真っ先に、確実に、安全に溶断するように作られている。
その犠牲が配線の過熱と母屋の火災を防ぐ。
車のクラッシャブルゾーンも同じで、車体前部が計画的に潰れて衝撃を吸収し、客室を守る。
全部を等しく硬くした車は、衝撃を乗員に直撃させる。
失敗時に事業体だけが潰れて個人と家庭が守られる構造は、人生のヒューズ設計そのものである。
回路は遮断されず、事業の火は家計という母屋まで届く。
資源が細ったとき何から切るか。
順位があれば収縮は設計された縮退運転になり、なければその場しのぎの切り売りになって、守るべきものから失われる。
銀行への国際的なバーゼル規制は、リスクに応じた自己資本の保有を義務づける。
損失が預金者と決済システムに波及する前に、自己資本が緩衝材として先に減る設計である。
資本というヒューズが先に切れることで、奥にある預金と決済網が守られる。
個人の生活防衛資金も構造は同一で、想定外の出費という過電流を貯蓄が吸収し、生活の基盤を守る。
緩衝資金ゼロの家計は、小さな過電流が直接母屋を焼く。
取引先への責任は契約と誠実さで果たすものであり、家庭を担保に差し出して果たすものではない。
隔壁のない献身は、危機のとき全員を巻き込む。
切れてよい場所と順序を先に決めた者だけが、切れてはならないものを守り切れる。
一つでもあれば、それが最初に直す配線である。
