この一見無謀な実演が、のちに超高層ビルの時代を開く。
彼が発明したのは、壊れない機械ではなく、正しく壊れる機械である。
検知も判断も要らず、故障の発生自体が制動の引き金になる。
切られた綱の前で台は止まり、彼は「諸君、すべて安全だ」と告げたと伝えられる。
常時満たした圧力がブレーキを「緩めて」おき、配管破断などいかなる異常でも、圧力喪失=全車制動になるよう論理を反転させた。
序列が決まって初めて、倒れる方向が定義できる。
多くの人の生活は「自分が動き続けないと守りが失効する」配線になっている。
守るべきものは無行動で維持される側へ(自動更新・自動送金)、止まるべきものは無行動で停止する側へ。
自分の連続稼働に安全を依存させない。
鉄道信号は断線や停電が起きると赤を現示する。
レールに常時電流を流し、途絶えたら停止信号になる閉電路方式は1872年にロビンソンが確立した。
踏切の遮断桿の多くは停電すると自重で降り、運転士の操作力が抜ければ非常ブレーキがかかるデッドマン装置も同じである。
検知と判断に頼る安全は検知の失敗で破れるが、物理に埋め込まれた安全は破れにくい。
正しくは「失敗しても、なお安全」。
故障は防がず、倒れる方向だけを設計する。
序列を先に決め、無行動が安全側へ落ちる配線に組み替えることが実装である。
