LF. 理論カリキュラム100 / 第5部 落ちても墜ちない
047
対策の強度階層
世界で最も多く採用されている再発防止策は「以後、気をつけます」である。

そして工学の世界では、この言葉は対策として数えられていない。

命題
「気をつけます」は、対策の階層に入っていない。
前提講 046
1 / 5
人的ミス対策の強度は、強い順に5段階。

排除(作業自体を消す)→代替化(自動化)→容易化(単純化・基準化)→異常検出(起きた瞬間に検知)→影響緩和(被害の受け皿)。

2 / 5
注意喚起・教育・精神論はこの階層の外にある。

注意力は疲労と慣れで劣化する変動部品であり、そこに安全を依存させる設計は誤りだからである。

3 / 5
誤りの期待数=操作回数n×誤り率p。

pは訓練でほとんど下がらないが、nは設計で消せる。

排除が最強なのは、pとの戦いを放棄してnをゼロにする戦略だからである。

4 / 5
実装例: 反復判断は月一度の方針決定と自動執行に置き換える(排除)。

期日処理は自動送金と通知に渡す(代替化)。

その場の判断は、事前基準への当てはめに変える(容易化)。

5 / 5
繰り返す失敗には階層の上から検討する。

消せないか、自動化できないか、簡素化できないか。

「次は気をつける」に到達する前に、四つの選択肢がある。

事例
架空の例だが、請求書の送り忘れを月に一度起こす事業者を考える。

精神論なら「月末に必ず確認」で終わるが、階層で考えると打ち手が変わる。

排除なら自動課金契約に切り替えて請求作業自体を消す。

代替化なら会計ソフトの自動送信。

容易化なら請求先一覧を塗りつぶすだけの表。

事例続

検出なら未送信の翌朝通知。

同じ問題に五段の解があり、上の段ほど再発率は構造的に下がる。

「気をつける」しか思いつかない問題の大半は、階層を知らないだけである。

よくある誤解
「精神論は無意味」と読むのは誤りである。

士気は実行速度に効く実在の変数だ。

ただしそれは性能の話であって、安全を精神に担わせてよい理由にはならない。

まとめ
対策は排除・代替化・容易化・検出・緩和の五段で考える。

最弱の手に頼る前に、常に四つの選択肢がある。

宿題
繰り返している失敗を一つ選び、五段それぞれの打ち手を一行ずつ書く。

最上段から実行可能なものを選ぶ。

次講
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047 対策の強度階層
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