LF. 理論カリキュラム100 / 第5部 落ちても墜ちない
046
ポカヨケ
失敗は構造に帰属させる
同じミスを繰り返して「なんて自分はダメなんだ」と言った瞬間、実は再発が確定する。

トヨタの現場がある言葉を改名したとき、そこには失敗との付き合い方を変える思想が込められていた。

命題
ミスを人格に帰属させる限り、対策は精神論にしかならない。
前提講 045
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トヨタ生産方式の新郷重夫は、うっかりミスを物理的に不可能にする仕掛けを「バカヨケ」と呼んでいたが、その言葉に傷ついた作業者がいたことを機に「ポカヨケ」へ改名した。
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ポカとは、囲碁将棋の名手がふと打つ悪手のことである。

つまり対策の対象は「能力の低い特定の人」ではなく「全人類共通の認知特性」だという宣言が、この改名に込められている。

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失敗を「自分がバカだから」と人格に帰属させると、対策は「もっと頑張る」にしかならない。

それは信頼性の低い部品への依存強化であり、工学的には対策の放棄である。

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「対策のない工程で、人類共通のポカが発現しただけ」と構造に帰属させて初めて、仕掛けによる対策が設計可能になる。

帰属先の変更は責任逃れではなく、再発防止の唯一の入口である。

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よって失敗分析のフォーマットから人格の欄を消す。

「怠惰だった」を禁じ、「判断が疲労時に行われた」「基準が事前になかった」と構造の言葉へ翻訳する。

人格は直せないが、構造は直せる。

事例
ポカヨケは身の回りに無数にある。

電子レンジは扉を開けると加熱が止まり、オートマ車はブレーキを踏まなければシフトをPから動かせず、SIMカードは切り欠きのせいで誤った向きには入らない。

軽油の給油ノズルはガソリン用より太く、ガソリン車の給油口には物理的に入らない。

どれも利用者に注意を求めず、誤りを構造で不可能にしている。

良い工業製品ほど、人間の注意力を信用していない。

よくある誤解
「人格に帰属させるな」を「反省するな」と読むのは誤りである。

反省の出力は感情ではなく構造の変更であるべきだ、というだけである。

「申し訳ない」で終わる反省と「工程に確認を一つ足した」で終わる反省の差が、再発率の差になる。

まとめ
ミスは人格ではなく、対策のない工程から生まれる。

帰属先を変えた者だけが、仕掛けで再発を断てる。

宿題
直近で繰り返したミスを、人格の言葉を使わずに一文で書き直す。

その文がそのまま対策の設計図になる。

次講
仕掛けには強度の序列がある
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046 ポカヨケ
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