だがこの数字は、成功者の自慢から出てきたものではない。
生活費と再投資という二つの支払いから逆算すると、機械的にここへ着地するのである。
つまりこれは目標ではなく、計算結果だ。
利益から再投資できない事業は、私財を注ぎ足すことになるが、それは事業と家計の間にあるべき隔壁を自分で壊す行為である(第5部で詳述)。
事業は、自分の燃料を自分で生めて初めて自走と呼べる。
この比率は、成長を止めない最低限の再投資水準として妥当な出発点である。
月利益160万円なら、80万円が再投資、80万円が手取り側に回る。
手取り側から税と社会保険をおよそ3割強引くと、手元にはおよそ55万円が残り、月の生活費40万円を賄ってなお余裕がある。
この逆算を一般化すると、生活費40万円の個人に必要な月利益は150〜200万円のレンジに収まる。
生活はできても、再投資の原資が出ないため、成長は本人の追加労働だけが頼りになる。
それは第6部で見る通り、構造としては停滞である。
感覚で聞けば大金だが、式で見れば、生活と成長を両立する個人事業の損益分岐点にすぎない。
一人前とは才能の称号ではなく、算術の通過点である。
生活費40万円を引くと残りは20万円で、税金を払えば再投資はほぼゼロになる。
彼女は3年間「順調に食えている」と感じていたが、外注も広告も教材も買えないため、3年後も稼ぎ方は初年度と同じだった。
一方、単価改定と商品化で月利益を170万円に乗せた同業者は、毎月80万円を外注化と集客の検証に回し、2年で自分の稼働を半分に減らした。
60万円の彼女が怠けていたのではない。
再投資の原資が出ない損益構造が、成長の入口を閉じていたのである。
このラインは資格試験ではなく、逆算の到達目標である。
今が30万円なら、間の道のりを第3部の再現性と本部の単価経済性で設計すればよい。
ラインの用途は、自己否定ではなく現在地の測定だ。
願望ではなく割り算である。
現在の利益との差額が、設計すべき距離である。
