この言葉を信じて参入した人の多くが、1年後に疲れ果てて消えていく。
原価ゼロは嘘だからである。
帳簿に載らないだけで、最も高い原価が毎日支払われている。
第1部で見た通り、事業とは価値の投下と回収である。
時間の投下を原価に数えない会計は、投下の半分を無視した会計だ。
1投稿30分なら1日10時間。
休みなしで半年続ければ、労働基準法の上限をはるかに超える自己搾取である。
しかも半年後の燃え尽きで投稿が止まれば、積んだ勢いも同時に止まる。
燃え尽きまで含めて収支を引けば、この施策は赤字である。
月10万円の利益でも、月200時間を使っていれば時給500円。
アルバイトの半分以下の単価で、自分という最も高価な人材を使っていることになる。
金の予算はゼロでも、時間の予算を無限に流し込んでいるので、本人は「無料で戦っている」と錯覚し続ける。
自分の時給を決め、すべての活動に計上する。
数字にした瞬間、時給を下回る作業が見え、切るべき活動と自動化すべき活動が並ぶ。
感覚では切れなかったものが、数字なら切れる。
月90時間の投下で、収益は月3万円。
時給に直すと約333円である。
本人は「元手ゼロで月3万稼いでいる」と認識していたが、自分の時給を2,000円と置いて計算し直すと、毎月18万円分の時間を投じて3万円を回収する、月15万円の赤字事業だった。
この計算を見た彼は投稿を1日1本に絞り、空いた時間を単価の高い受託に回した。
収益の合計は翌月から増えた。
数字が変えたのは努力量ではなく、投下先である。
将来の倍率を上げる投資(型づくり、検証、学習)は、当月の時給がゼロでも投下に値する。
禁じられているのは、投資でも回収でもない、ただの低時給作業を無自覚に続けることである。
時給を決めて全活動に計上した瞬間、事業の本当の損益が現れる。
その数字を、自分が設定したい時給と並べて眺める。
