LF. 理論カリキュラム100 / 第4部 会計と逆算
036
成長率より絶対利益と現金
「前年比200%成長」という言葉は美しい。

投資家向けの資料でも、SNSの実績報告でも、率はいつも主役である。

だが倒産した会社の決算を並べると、奇妙な事実に気づく。

伸びながら死んだ会社が、いくらでもあるのだ。

命題
成長率は倒産を防がない。現金だけが倒産を防ぐ。
前提講 034
出典 アーバンコーポレイション(2008年、黒字倒産の例)。
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率の見栄えは、固定費の先行投資を正当化しやすい。

「成長のための投資」という言葉のもとで、人を雇い、オフィスを借り、広告を積む。

売上の伸びが投資の伸びに一度でも追い越されると、資金繰りは静かに壊れ始める。

これが率を追う経営の典型的な破綻経路である。

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事業を殺すのは赤字ではなく、現金の枯渇である。

赤字でも現金があれば続けられるし、黒字でも支払いに現金が間に合わなければ終わる。

損益計算書は意見だが、現金残高は事実だ。

3 / 5
よって投資判断の問いは常に一つに帰着する。

「最悪のシナリオで、現金は何ヶ月持つか」。

この問いに月数で答えられない投資は、金額の大小にかかわらず、まだ判断の材料が揃っていない。

4 / 5
月次で読む計器は3つでよい。

現金残高、今後3ヶ月の入出金予定、最悪時の持続月数。

計器盤に目盛りを増やすほど操縦は上手くなる気がするが、実際は逆で、見るべき3つが埋もれる。

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成長は、現金の制約の内側で最大化する従属変数である。

順序を逆にして、成長のために現金の安全を削った瞬間、事業は一度の下振れで終わる賭けに変わる。

事例
実例として、2008年に経営破綻した不動産会社アーバンコーポレイションが知られる。

直前の決算期まで大きな利益を計上し、成長企業として扱われていたが、金融環境の変化で資金調達が詰まり、黒字のまま民事再生に至った。

損益の見た目と、支払いに使える現金は別物である。

この構造は規模を問わず同じで、個人事業でも、売掛金の入金が2ヶ月先の受託業が、外注費の支払いを先に迫られて詰まる形で日常的に起きている。

伸びているかではなく、現金が続くか。

事例続

倒産を分ける問いは、昔から一つしかない。

よくある誤解
「成長を狙うな」と読むのは誤りである。

狙ってよい。

ただし成長は目的関数ではなく、現金という制約条件の内側で解く変数である。

制約を先に固定した者だけが、安心して踏み込める。

まとめ
率は飾り、現金が命綱である。

計器は3つ。

現金残高、3ヶ月の入出金、最悪時の持続月数。

宿題
「売上がゼロになった場合、現在の現金で事業と生活は何ヶ月持つか」を今夜計算する。

即答できるようになるまで、毎月更新する。

次講
見えない原価を計上する
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第4部 会計と逆算
036 成長率より絶対利益と現金
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