ほとんどの人は迷わず頷く。
だがこの倍増には、まったく価値の異なる2種類がある。
片方は資産の増加で、もう片方は、危険の増加である。
本人が営業し、本人が提供し、本人が判断する。
その稼働量を2倍にすれば利益も2倍になるが、構造は何も変わっていない。
数字の伸びが、構造の停滞を隠すのである。
第3部で定義した通り、事業者のレベルは金額ではなく、再現性・レバレッジ・委譲という壁を越えたかどうかの状態で決まる。
金額はその状態が生む症状にすぎない。
買い手が買うのは仕組みであって、社長の時間ではない。
だからスター型には、どれだけ利益が出ていても企業価値がほぼつかない。
「この利益の増加は、どの壁を越えたから起きたのか」。
答えが「単価を上げた」「仕組みで受注が増えた」なら成長である。
「自分がもっと働いた」なら、それは成長ではなく消耗の前借りだ。
偶発は再現せず、属人強化は倒れた日に消える。
どちらも、翌年の計画の土台には使えない。
一人は個人レッスンを詰め込み月200万円の利益を出す人気講師。
もう一人は教材と講師採用の仕組みを作り、自分はほぼ教えずに月80万円を出す教室運営者である。
金額では前者が2.5倍勝つ。
だが前者が体を壊せば収入は即ゼロになり、事業を売ることもできない。
後者は自分が3ヶ月休んでも教室が回り、譲渡の相談もできる。
金額の比較では前者が上、状態の比較では後者が上。
どちらを「成長している」と呼ぶかで、その人の経営観が分かる。
属人期の高利益は、仕組み化に投資するための貴重な原資になる。
悪いのは属人で稼ぐことではなく、その利益を成長と誤認して、構造を変える投資を先送りすることである。
利益が増えた月ほど、「どの壁を越えたから増えたのか」を自分に問う。
