だが本来の逆算は精神論の対極にある、ただの割り算である。
しかも割り算の目的は、やることを増やすことではない。
減らすことだ。
今月の売上に少し足す、フォロワーを少し増やす。
延長線の上には、現状と地続きの未来しかない。
逆算だけが「やらないこと」を決められる。
到達点から割り戻すと、届かない打ち手が先に消えるからである。
基準はEBITDA(利払い・税・減価償却前の利益。
会社の稼ぐ力を測る指標)×倍率という企業価値の言語か、あるいは金銭的到達点。
どちらでもよいが、金額と期限のない出口は出口ではない。
年商3億円が目標なら、単価10万円で3,000人。
月に均して250人。
成約率2%なら月12,500人の接触が要る。
リード獲得単価500円なら、月625万円のマーケ予算が必要という計算になる。
足りない変数が決まれば、打ち手は自動的に絞られる。
逆算とは、無数にある施策から、今やる意味のない施策を消す装置である。
頑張りの量を増やす前に、どの変数を動かすのかを決める。
それが会計を持つということだ。
当時の単価は20万円。
2,400万円を単価で割ると年120件、月10件の受注が要る。
1件の準備と登壇に20時間かかるため、月10件では200時間となり、実働可能時間を超えて物理的に不可能だと判明した。
つまり彼の目標は、頑張りの不足ではなく単価の構造で最初から詰んでいた。
単価を60万円に再設計すると必要件数は月3.4件、提供時間は約68時間で収まる。
逆算がなければ、彼は達成不可能な目標に向かって営業量だけを増やし続けていた。
計算一枚が、数年分の空回りを消した。
逆算の本体は夢ではなく引き算であり、成果物は「やらないことのリスト」である。
手帳に書いた目標が行動を変えないのは、割り戻して打ち手を消す工程を飛ばしているからだ。
逆算は野心の飾りではなく、引き算の道具である。
計算の途中で「物理的に不可能」が出たら、それが最初に直すべき変数である。
