だが集客の上手い下手で事業が決まるなら、広告代理店は全社大富豪のはずである。
順序が壊れているのだ。
設計には、飛ばせない5つの層がある。
事業とは誰かの行動を変えることであり、「誰の、どの行動を、どう変えるか」と、その変化への支払意思(WTP。
いくらなら払うかという金額)をまず定義する。
ここが空欄のまま進むと、以降の全層が砂上になる。
売る相手と売る変化が決まっていない事業に、正しい会計も戦術も存在しないからだ。
出口からの逆算で数字の枠を決める。
何年後にどんな状態で完成なのかを金額で置き、そこから年次・月次の必要数字を割り戻す。
感覚ではなく枠が先にできる。
会計が決めた数字の枠の中で、ビジネスモデル・導線・堀を設計する。
数字の裏づけがないモデル設計は絵であり、モデルのない数字は空論である。
この層で両者が噛み合う。
打ち手の選定と、資源の配分帯(この施策に月いくら・何時間までという上限)と、撤退ラインを同時に決める。
打ち手だけ決めて上限とやめ方を決めない設計が、後の迷走を生む。
回し続け、実績を第4層に戻し、自分を変数から抜いていく。
「策定」でなく「稼働」であることが本質だ。
計画は一度作るものだが、稼働は毎月回り続け、実績で戦術を補正し続ける。
理念は数字を生まない。
数字を縛るだけ。
理念から売上目標を導いた気になると、数字の根拠が思想にすり替わり、検証できなくなる。
彼は動画教材を半年かけて完成させてから「さて誰に売ろう」と考え始めた。
つまり第1層を最後に回した。
売り先を探し始めて気づいたのは、想定していた学生層に支払意思がほぼないことだった。
教材の質は高かったが、順序が逆だったため、半年の制作がまるごと検証前の賭けになっていた。
5層を順に流していれば、支払意思の不在は制作前の聞き取りで分かり、半年は守られていた。
層の順序は、作業の順序ではなく、損失を防ぐ順序である。
個人事業なら5層は紙1枚で書ける。
重いのは手続きではなく、順序を飛ばしたあとの手戻りの方だ。
この一方向の流れが事業設計の骨格である。
印の層が、今いちばん危険な場所である。
