数年後、一方は営業を減らしても売上が立ち、他方は毎月ゼロから顧客を探している。
差を作ったのは能力ではない。
開業の日に選んだ市場の、需要が戻る周期である。
結婚式場は毎年、全顧客を新規で集め直す。
どれだけ顧客を満足させても、その顧客が二度目を買いに来ることは原理的にほぼない。
食、税務、採用、集客、保守。
これらの市場では、獲得した顧客が周期的に戻るため、営業の成果が積み上がっていく。
同じ一件の獲得でも、生涯で運ぶ売上がまるで違う。
売り方の工夫で獲得コストは下げられるが、顧客の人生にその需要が何回発生するかは、市場が決めている。
「この需要は何ヶ月周期で戻ってくるか」。
この一問は、市場規模や競合数より先に確認すべき物性である。
周期が書けない市場は、毎月が新規開拓の市場である。
収益の錨は派手な単発ではなく、地味で反復する痛みに置く。
一発の大型案件は目立つが、事業の下限を支えるのは、静かに戻り続ける需要の方である。
車検は法律で2年(新車は3年)ごとと定められており、需要の反復が制度で保証されている。
だから整備工場は、一度信頼を得た顧客が高確率で戻る前提で経営が組め、案内はがき一枚が営業活動として成立する。
理美容業も同じで、髪は約1ヶ月で伸びるという生理現象が、4〜8週間周期の反復需要を作っている。
QBハウスのような定額カット業態が安定して多店舗化できたのは、単価の安さをこの反復周期が支えているからである。
反復性の高い市場では、獲得は一度、回収は何度も、という算術が働く。
単発市場でも、周辺の反復需要を併設できれば錨は作れる。
結婚式場が記念日ディナーや写真の年次撮影を売るのはその設計である。
避けるべきは単発市場そのものではなく、錨のない単発一本の構造である。
参入前に周期を問うことが、安定への最大の一手になる。
書けない場合、反復する周辺需要を一つ設計できないか検討する。
