LF. 理論カリキュラム100 / 第3部 売上の物理学
025
海の家の教訓
1日に数千人が訪れる海の家と、1日30人の定食屋。

取引件数だけ見れば海の家が圧倒的に安定しているはずだ。

だが実際に潰れやすいのはどちらか。

件数の数え方には、罠がある。

命題
依存を共有する1,000件の取引は、実質1件である。
前提講 024
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海の家は晴れた日に数千件を売る。

店舗としては圧倒的な取引件数であり、前講の方程式の第一変数だけを見れば、極めて安定した事業に見える。

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しかし全取引が「天候」という同一変数に依存している。

客の一人一人は別人でも、来店の可否を決めている根っこの条件は全員同じである。

見かけは数千件、構造は一件である。

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雨が降れば全件が同時に0になる。

独立性ゼロの件数は、数えても意味がない。

安定に寄与するのは件数そのものではなく、「同時には消えない件数」だけである。

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よって件数を数える前に、依存先の種類を数える。

自分の取引を並べ、「この取引が消えるとしたら何が原因か」を書き出したとき、同じ原因が並ぶ範囲は一件として数える。

これが独立性の会計である。

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実装はチャネル分散と、各チャネルでの下限件数の確保である。

X・インスタ・YouTube・検索・紹介と入口を分け、どれか一つが死んでも下限が守られる形を作る。

分散の目的は売上の最大化ではなく、同時死の回避である。

事例
実例として、2020年のコロナ禍における観光業がある。

訪日客向けの土産物店、ガイド業、民泊は、それぞれ何百、何千という取引を持っていたが、「外国人観光客が日本に来られる」というただ一つの前提をすべての取引が共有していた。

入国が止まった瞬間、業種も規模も違う無数の事業の売上が、ほぼ同時にゼロへ落ちた。

個々の事業者の努力や商品力の問題ではない。

取引の束が構造上一件だったことが、同時死の原因である。

事例続

逆に、同じ時期に国内客と通販という別の依存先を持っていた事業者は、下限を守って生き残った。

よくある誤解
「分散しろ」を「手当たり次第に販路を増やせ」と読むのは誤りである。

管理できない数の販路は、どれも中途半端になり全チャネルの下限件数が立たない。

目的は数ではなく、依存先の種類を2つ以上にすることである。

まず2本目の独立した柱を立てることが、分散の第一歩になる。

まとめ
件数は「同時に消えない単位」で数え直す。

依存を共有する千件より、独立した十件が、下限を支える。

宿題
自分の売上上位の取引について「消えるとしたら原因は何か」を書き出し、同じ原因が何割を占めるかを計算する。

過半なら、構造上の件数は一件である。

次講
3つ目の変数、市場の反復性
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