変数が分からないものは、動かしようがない。
この講で、安定を3つの変数に分解する。
分解できた瞬間、安定は願望から設計対象に変わる。
多いほど1件の増減の影響が小さい。
100円×100人の月は1人減っても99%が残るが、1万円×1人の月は1人減ると0になる。
合計額が同じでも、件数が下限の頑丈さを決める。
各取引が同じ依存を共有していないこと(次講で詳述)。
件数がいくら多くても、全件が同じ一つの事情で消えるなら、数の意味がなくなる。
同じ需要が定期的に戻ってくる市場にいること。
戻る需要は取引を自動で補充するから、営業を止めた月にも件数が湧く。
反復のない市場では、件数を毎月ゼロから積み直すことになる。
件数が多くても独立性ゼロなら崩れ、独立していても反復しなければ息切れする。
足し算ではなく掛け算である点が、この方程式の急所である。
安定は祈りではなく、この3変数の設計である。
自分の不安定がどの変数の不足から来ているかを特定できれば、打ち手は自動的に絞られる。
保険会社が成り立つのは、大数の法則、つまり十分な件数を集めると個々の偶然が均されて全体が予測可能になるという数学の性質に載っているからである。
一人の契約者がいつ事故に遭うかは誰にも分からないが、独立した契約者を何十万件も束ねると、年間の支払総額はほぼ狂いなく読める。
件数と独立性が揃うと、個々の偶然の塊が、全体としては読める数字に変わる。
事業の売上も原理は同じで、読めない一件の集積を、読める全体に変換する装置が、この3変数である。
掛け算である以上、件数は3分の1の変数にすぎない。
次講で見る通り、独立性を欠いた件数は、数えるだけ無駄になる。
3変数のどれが欠けているかを特定することが、安定への最初の設計作業である。
