だがその大半は、発見の顔をした思い込みである。
厄介なことに、本人にはどちらも同じ「ひらめき」に感じられる。
だから主観ではなく、条件で仕分ける道具が要る。
対象顧客の誰もが「そうそう」と感じるか。
一人にしか当てはまらない観察は事例であってインサイトではない。
五人に話して五人がうなずくかが、最初の関門になる。
これまで言語化されていなかったか。
すでに誰もが言っていることは、正しくても注意を取れない。
「言われてみれば確かにそうだ、でも言われたことがなかった」という反応が、新鮮さの証拠である。
解決可能な緊張、つまり理想と現実のずれを含むか。
緊張のない事実は「へえ」で終わり、行動を生まない。
ずれがあるからこそ、埋める商品が成立する。
それを突くと顧客の行動が変わるか。
面白いが行動につながらない観察は、雑学である。
商品・発信・価格のどれかを変える力を持つ観察だけが、事業の材料になる。
そして採集源は想像ではなく、一人への伴走(013)である。
机の上で4条件を満たす文章は書けてしまうから、素材が現場から来ていることが大前提になる。
当初は「嫌な臭いを消す」と訴求したが売れなかった。
家庭訪問の観察で、強い臭いの中で暮らす人ほど臭いに慣れて気づいていないこと、一方で掃除を終えた人が仕上げにひと吹きして達成感を味わっていることが分かった。
「臭いに困っている」は売り手の思い込みで、本物のインサイトは「掃除の仕上げに、目に見えない達成の印が欲しい」だった。
訴求を切り替えた後、ファブリーズは世界的なブランドに育った。
普遍性・新鮮さ・緊張・実用性の4条件を満たす観察は、同じ商品の売上を桁で変える。
ひらめきは仕分け前の候補にすぎず、4条件の検査を通って初めてインサイトと呼べる。
才能の問題ではなく、検査手順の問題である。
検査を通った観察だけを、商品と発信の土台に使う。
4点未満なら、それを補強する観察を次の顧客対話で取りに行く。
