LF. 理論カリキュラム100 / 第2部 顧客起点の原理
019
インサイトの4条件
顧客観察を始めると、発見が次々に出てくる。

だがその大半は、発見の顔をした思い込みである。

厄介なことに、本人にはどちらも同じ「ひらめき」に感じられる。

だから主観ではなく、条件で仕分ける道具が要る。

命題
思い込みと本物のインサイトは、4つの条件で仕分けできる。
前提講 013, 014
出典 P&G由来のインサイト定義。
1 / 5
第一の条件は普遍性である。

対象顧客の誰もが「そうそう」と感じるか。

一人にしか当てはまらない観察は事例であってインサイトではない。

五人に話して五人がうなずくかが、最初の関門になる。

2 / 5
第二の条件は新鮮さである。

これまで言語化されていなかったか。

すでに誰もが言っていることは、正しくても注意を取れない。

「言われてみれば確かにそうだ、でも言われたことがなかった」という反応が、新鮮さの証拠である。

3 / 5
第三の条件はテンションである。

解決可能な緊張、つまり理想と現実のずれを含むか。

緊張のない事実は「へえ」で終わり、行動を生まない。

ずれがあるからこそ、埋める商品が成立する。

4 / 5
第四の条件は実用性である。

それを突くと顧客の行動が変わるか。

面白いが行動につながらない観察は、雑学である。

商品・発信・価格のどれかを変える力を持つ観察だけが、事業の材料になる。

5 / 5
4条件を通らない「発見」は、自分の願望の投影である。

そして採集源は想像ではなく、一人への伴走(013)である。

机の上で4条件を満たす文章は書けてしまうから、素材が現場から来ていることが大前提になる。

事例
実例として、P&Gの消臭剤ファブリーズ(米国発売1996年)の立て直しがある。

当初は「嫌な臭いを消す」と訴求したが売れなかった。

家庭訪問の観察で、強い臭いの中で暮らす人ほど臭いに慣れて気づいていないこと、一方で掃除を終えた人が仕上げにひと吹きして達成感を味わっていることが分かった。

「臭いに困っている」は売り手の思い込みで、本物のインサイトは「掃除の仕上げに、目に見えない達成の印が欲しい」だった。

訴求を切り替えた後、ファブリーズは世界的なブランドに育った。

事例続

普遍性・新鮮さ・緊張・実用性の4条件を満たす観察は、同じ商品の売上を桁で変える。

よくある誤解
「インサイトはひらめきだ」と読むのは誤りである。

ひらめきは仕分け前の候補にすぎず、4条件の検査を通って初めてインサイトと呼べる。

才能の問題ではなく、検査手順の問題である。

まとめ
発見と思い込みは、普遍性・新鮮さ・テンション・実用性の4条件で仕分ける。

検査を通った観察だけを、商品と発信の土台に使う。

宿題
自分が今持っている「顧客はこうだ」という認識を一つ選び、4条件で採点する。

4点未満なら、それを補強する観察を次の顧客対話で取りに行く。

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