声をかけやすかった友人、たまたま近くにいた知人。
だが一人目は、事業が最初に読む教科書である。
教科書を適当に選ぶ人はいないのに、一人目は適当に選ばれている。
優しい人は不満を言わず、断らず、褒めてくれる。
その快適さが、市場には存在しない好意的な反応を学習させてしまう。
その領域に金を払った実績があること。
痛みが現在進行形であること。
過去に払った人は払う習慣を持ち、今困っている人は解決を本気で求める。
この2条件が、観察に市場の重力を与える。
顧客を属性ではなく行動で定義するという原則(第7部で扱う)は、一人目の選定条件をそのまま拡張したものである。
最初の選び方が、後の定義の型を作る。
同質な五人は実質一人である。
これは後に第5部で学ぶ独立性の原理の先取りで、サンプルが同じ偏りを共有していれば、数を増やしても情報は増えない。
一人目から得る観察が事業仮説の材料である以上、材料の産地を選ぶことは、仮説の精度を選ぶことと同じである。
一人は快く応じてくれた大学時代の友人を一人目にした。
友人は毎回楽しく雑談し、「すごく良かった」と言い続けたが、3ヶ月後に「今は忙しくて」と離れ、得られた学習はゼロだった。
もう一人は、TOEICに二度落ちて昇進が保留されている知人、つまり金を払ってでも解決したい痛みが現在進行形の人を選んだ。
この顧客は要求が厳しく、教材の穴を容赦なく指摘したが、その指摘がそのまま商品改善のリストになり、合格後は職場の同僚を2人紹介した。
快適な一人目は何も教えず、痛みを持つ一人目だけが教科書になった。
問題は関係の近さではなく、選定条件を満たすかどうかにある。
金を払った実績と現在進行形の痛みを持つ友人なら、最良の一人目になり得る。
条件で選び、関係で選ばない。
払った実績と現在進行形の痛み、この2条件で選ぶ。
2点未満なら、選び直しを検討する。
