LF. 理論カリキュラム100 / 第2部 顧客起点の原理
016
一人目の選び方
最初の顧客は、たいてい深く考えずに決まる。

声をかけやすかった友人、たまたま近くにいた知人。

だが一人目は、事業が最初に読む教科書である。

教科書を適当に選ぶ人はいないのに、一人目は適当に選ばれている。

命題
誰を一人目に選ぶかが、事業が学習する内容を決める。
前提講 013, 015
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身近さだけで選ぶと「優しいから付き合ってくれる人」を引き、優しさをニーズと誤認する。

優しい人は不満を言わず、断らず、褒めてくれる。

その快適さが、市場には存在しない好意的な反応を学習させてしまう。

2 / 5
選定条件は2つである。

その領域に金を払った実績があること。

痛みが現在進行形であること。

過去に払った人は払う習慣を持ち、今困っている人は解決を本気で求める。

この2条件が、観察に市場の重力を与える。

3 / 5
この条件は、後の顧客定義の原型になる。

顧客を属性ではなく行動で定義するという原則(第7部で扱う)は、一人目の選定条件をそのまま拡張したものである。

最初の選び方が、後の定義の型を作る。

4 / 5
五人へ広げるときも同じ条件で、かつ少しずつ状況の異なる人を選ぶ。

同質な五人は実質一人である。

これは後に第5部で学ぶ独立性の原理の先取りで、サンプルが同じ偏りを共有していれば、数を増やしても情報は増えない。

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サンプルの質が、そのまま仮説の質になる。

一人目から得る観察が事業仮説の材料である以上、材料の産地を選ぶことは、仮説の精度を選ぶことと同じである。

事例
架空の例だが、英語コーチを始めた二人がいる。

一人は快く応じてくれた大学時代の友人を一人目にした。

友人は毎回楽しく雑談し、「すごく良かった」と言い続けたが、3ヶ月後に「今は忙しくて」と離れ、得られた学習はゼロだった。

もう一人は、TOEICに二度落ちて昇進が保留されている知人、つまり金を払ってでも解決したい痛みが現在進行形の人を選んだ。

この顧客は要求が厳しく、教材の穴を容赦なく指摘したが、その指摘がそのまま商品改善のリストになり、合格後は職場の同僚を2人紹介した。

事例続

快適な一人目は何も教えず、痛みを持つ一人目だけが教科書になった。

よくある誤解
「友人を顧客にするな」と読むのは誤りである。

問題は関係の近さではなく、選定条件を満たすかどうかにある。

金を払った実績と現在進行形の痛みを持つ友人なら、最良の一人目になり得る。

条件で選び、関係で選ばない。

まとめ
一人目は事業が最初に読む教科書である。

払った実績と現在進行形の痛み、この2条件で選ぶ。

宿題
一人目(または次の顧客候補)が「その領域に金を払った実績」と「現在進行形の痛み」を持つか、2問で採点する。

2点未満なら、選び直しを検討する。

次講
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