LF. 理論カリキュラム100 / 第2部 顧客起点の原理
017
「全部やります」は商品ではない
一人を満たし切る戦略には、出口を用意しないと落ちる穴がある。

顧客に感謝され、毎月の顧問料も入り、忙しく働いている。

それなのに1年後、事業は一歩も進んでいない。

居心地の良さが、罠の証拠である。

命題
コンシェルジュは学習手段であり、御用聞きの継続は事業の停滞である。
前提講 013
1 / 5
個別対応の価値の多くは「あなたが個別に対応していること」自体にある。

顧客が買っているのは解決策の中身であると同時に、いつでも頼れるあなたの存在である。

この価値は本物だが、あなたの時間と一体化しており、切り離して増やせない。

2 / 5
これを商品と誤認すると、便利屋として食えてしまい、転換できずに終わる。

五人分の顧問収入は心地よい罠になる。

食えてしまうことが問題なのである。

飢えていれば嫌でも転換を考えるが、満腹の停滞は自覚されない。

3 / 5
「全部やる」の真の目的は、五人に共通して繰り返し現れる依頼、すなわちセンターピンの特定である。

雑多な依頼の山は、それ自体が観測データであり、頻度の偏りが「市場が本当に求めている一点」を指し示す。

4 / 5
だから転換条件を先に決める。

例えば、同じ依頼が五人中四人で出た、その単体解決への支払い意思が確認できた、という条件である。

渦中に入ってからでは、顧問収入を失う恐怖が判断を歪める。

基準は冷静な今しか作れない。

5 / 5
条件を満たしたら、一対多への転換を開始する。

条件なき継続は事業ではなく職業になる。

職業が悪いのではない。

ただ、事業を作るつもりで職業に着地するのは、目的地の取り違えである。

事例
架空の例だが、中小企業のSNS運用を「全部やります」で請け負ったフリーランスがいる。

3社の顧問で月40万円が安定し、2年が経った。

ある時、3社すべてから「投稿ネタを考えるのが一番苦しい」という同じ依頼が繰り返されていることに気づき、ネタ出しの型だけを教材化して単体販売したところ、顧問業より高い利益率で売れた。

振り返れば、この型は1年前から目の前にあった。

顧問収入の心地よさが、観測データを1年間読ませなかったのである。

事例続

全部やる期間が長すぎると、せっかく集めたデータが棚で眠る。

よくある誤解
「顧問契約や個別対応は悪い」と読むのは誤りである。

個別対応は最高の観測手段であり、初期には不可欠である。

問題は、観測のための手段を収益の完成形と取り違え、出口条件なしに続けることだけである。

まとめ
全部やるのは、何を一つに絞るかを見つけるためである。

転換条件を先に決めた者だけが、コンシェルジュを卒業できる。

宿題
顧客からの依頼を種類別に数え、最頻の依頼を特定する。

それが単体商品になるかを、支払い意思の確認一件で検証する計画を立てる。

次講
この期間に積み上がっているものを正しく数える
LF.
第2部 顧客起点の原理
017 「全部やります」は商品ではない
MOLVACK