AIの普及は、この現象を業界を問わず静かに進めている。
前講の6要素のうち、どれが溶けてどれが深くなるのか。
投資先を間違える前に、リストで確認する。
「引っ越しが面倒だから残る」という理由は、引っ越し作業をAIが肩代わりした瞬間に消える。
面倒を人質にした堀は、面倒の消滅とともに消える。
難しいツールを使いこなせることが参入障壁だった職種ほど、この変化の影響は大きい。
習熟は資産から、単なる過去の思い出に変わる。
形式の違いで囲い込む戦略は、変換コストがゼロに近づく世界では成立しない。
誰でもコンテンツを量産できる時代には「誰が言ったか」が最後のフィルターになる。
AIは①③⑥にとって、脅威ではなく増幅装置である。
自社の堀がどちら側かの棚卸しが急務である。
堀の点検を先送りした事業は、水が抜けたあとの城で敵を迎えることになる。
かつてEvernoteから別のノートアプリへの移行は、書式崩れと格闘する手作業の苦行だった。
いまはNotionやObsidianが公式の取り込み機能を備え、さらに「全ノートを整理し直して移して」とAIに頼む世界が視野に入っている。
データの引っ越し、書式の変換、新しい操作の学習。
人を縛っていた面倒は、AIが肩代わりできる順に消えていく。
それでも残るのは、そこにいる人間関係と、積み上げた信用 — 面倒とは別の原理で立っている堀だけである。
消えるのは面倒に依存した堀だけで、蓄積・人・信用の堀はむしろ深くなる。
これは悲観の話ではなく、堀への投資先を組み替えよという話である。
棚卸しは早い者勝ちである。
