LF. 理論カリキュラム100 / 第7部 注意→信頼→販売
076
アジェンダセッティング
同じ実力なのに、いつも引用される人と、いつも比較される人がいる。

差は発信量ではない。

議論がどちらの土俵で行われているか、である。

土俵そのものを作る技術に、この講で名前を付ける。

命題
「何を議論すべきか」という枠組み自体を提供する者は、個別の議論で常に半歩有利に立つ。
前提講 075
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個別商品の訴求は、顧客の思考の下流に入る。

枠組みの提供は上流に入る。

下流では「どれを買うか」が争われるが、上流では「何で比べるか」が決まる。

比較軸を作った者は、比較される前に選ばれている。

2 / 5
市場が「三つの壁」「安定の方程式」のような枠組みで考え始めたとき、その枠組みの原典はあなたになる。

人は枠組みを使うたびに、無意識に出所を参照する。

使われる回数が、そのまま想起の回数になる。

3 / 5
枠組みは模倣される。

しかし模倣が広がるほど「どこから出たか」という原典の評判はむしろ強化される。

コピーは劣化するが、参照は蓄積する。

模倣は損失ではなく、無償の流通である。

4 / 5
だから枠組みは隠さず、名前と由来を持たせて早く広く出す。

名前は概念の取っ手であり、良い語源は説明コストを恒久的に下げる。

名前のない理論は、どれだけ優れていても運ばれない。

5 / 5
命名の基準は4つ。

読みが一意であること、由来が一文で語れること、短いこと、検索で独自に立つこと。

この基準を満たした名前だけが、市場の共通言語になる資格を持つ。

事例
『ブルー・オーシャン戦略』(キムとモボルニュ、2005年)が実例である。

競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン」、競争のない新市場を「ブルー・オーシャン」と名付けたこの本の登場以降、世界中の会議室が市場選定をこの語彙で議論するようになった。

以後20年、市場戦略の議論が行われるたびに原典が参照され続けている。

理論の中身だけなら先行研究にも類似はあったが、議論の枠組みに名前を与えたことが、著者たちを「引用される側」に固定した。

命名は、思想の所有権を市場に登記する行為である。

よくある誤解
アジェンダセッティングを「造語を乱発しろ」と読むのは誤りである。

命名基準を満たさない造語は、覚えるコストだけを課して定着せず、むしろ信頼を削る。

名前は少数を、磨いて出す。

まとめ
議題を出す者が土俵を持つ。

枠組みに名前を付けて配ることは、市場の共通言語に自分の署名を入れることである。

宿題
自分の理論・手順のうち、由来を一文で語れる名前が付いているものが何個あるか点検する。
次講
出すことへの恐怖に答える
LF.
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076 アジェンダセッティング
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